さくら花(1)
さくらの歌といえば、西行。その足跡を偲んで、京都(東山)、高野山、伊勢(二見浦)、四国(白峰陵)、吉野(西行庵)、小夜の中山、白河の関、多賀城跡、松島、塩釜、平泉などを尋ねたことがある。奥吉野の西行庵には二度ばかり訪れた。それはさておき、西行の詠んだ「さくら/花」の歌を佐佐木信綱『山家集(聞書集含む)』(岩波文庫)でざっと調べてみたら、307首ほどあった。
「山家集」より
春といへば誰も吉野の花を思ふ心にふかきゆゑやあるらむ
あくがるる心はさても山櫻ちりなむ後や身にかへるべき
おのづから花なき年の春もあらば何につけてか日を送らまし
山ざくらまた來むとしの春のため枝をることはたれもあなかむ
ねがはくは花の下にて春死なんそのきさらぎのもち月の頃
「聞書集」より
吉野山うれしかりけるしるべかなさらでは奧の花を見ましや
雲にまがふ花のさかりを思はせてかつがつかすむみよし野の山
瀧にまがふ峯のさくらの花ざかりふもとは風になみたたみけり
かすみしく吉野の里にすむ人はみねの花にやこころかくらむ