天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

俳句―取合せ論(2/5)

一茶像(webから)

「俳句の作り方 〜初心者入門と定型・切れ字・季語〜 」
http://haiku-nyuumon.com/article/195061307.html
を借りて「取合せ」を詳しく解説しよう。
 一句の中で、二つの事物(主に、季語と別のモノ・コト)を取合わせることで、両者に相乗効果を発揮させて、読者を感動に導く。そのような俳句を取合わせの句、または、配合の句と呼ぶ。そして、取合わせの句で、二つの事物が醸し出す効果・妙趣を、二物衝撃と言う。
     花の雲鐘は上野か浅草か        松尾芭蕉
 *「花の雲」(雲のように咲き誇る桜)と「鐘の音」
     味噌豆の熟ゆる匂ひやおぼろ月     中村史邦
 *「味噌豆の煮える匂い」と「おぼろ月」
     けいこ笛田はことごとく青みけり    小林一茶
 *「けいこ笛」と「青田」
これらの俳句は、みな途中に切れが入る俳句(二句一章の俳句)で、切れの前に登場する事物と、後に登場する事物が互いに響き合っている。
 取合わせの俳句、二物衝撃の句は、次のように途中に切れの入らない一句一章の俳句でも作ることができる。
     海士の屋は小海老にまじるいとどかな  松尾芭蕉
 *「たくさんの小海老」とそこに一匹まじった「いとど(カマドウマ)」
     まさかりで柿むく杣が休みかな     水田正秀
 *「柿」と「まさかり」
     あぢさゐに喪屋の灯うつるなり     加藤暁台
 *「あじさい」と「喪屋の灯」


 取合わせの他の例をあげておく。
     子を思ふ憶良の歌や蓬餅     竹下しづの女
     ドライブの帰りは無言つくつくし   神野紗希
     つばくらめナイフに海の蒼さあり   奥坂まや
     秋の風豆腐四角き味したり      小川軽舟
     今日よりは明日が好きなりソーダ水   星野椿