天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

椎の花

 イタジイとコジイの二種があり、日本の常緑樹林を代表する。前者は主に沿海地に、後者は主に内陸部に見られるという。椎は性的な独特な匂いを発する。

 

     旅人のこころにも似よ椎の花      芭蕉

     杜に入る一歩に椎の花匂ふ     山口誓子

     椎匂ふ夜を充ち充ちて書きゐたり  大野林火

     椎の香やひとり頷く夜の坂     藤田湘子

     花椎や悔深ければ父を恋ふ     作間正雄

 

  生徒居らぬ廊下歩くとき椎の花の青臭き香がふとみだらなり

                      植松寿樹

  椎の花ふいに匂える夕闇は宿世の罪に遇う思いする

                     馬場あき子

 

椎の花