天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

鉄線

円覚寺・松嶺院にて

 キンポウゲ科のつる草。中国が原産で寛永年間に渡来した。六、七月に、直径5〜8センチの白または淡紫色の六弁花をつける。直径10センチ以上の花は、クレマチスとの交配種で、晩春から夏に四枚から八枚のがく片を開く。


  よきものは少くて足るとおもへるを多く咲けるよ鉄線の花
                      窪田空穂
  何となく生き疲れたるここちにて鉄線ひらく庭におりたつ
                      筏井嘉一
  白塗りの壁を背面に鉄線の大むらさきのはな豪華なり
                      宮 柊二
  紫のてつせんの花を愛(を)しみこし夏のときめき終らむとす
                      宮 柊二
  鉄線は隣家に濃ゆく咲きてをり昔つきたる嘘のさびしさ
                      辰巳泰子