天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

揚羽蝶

二宮町吾妻山にて

 鱗翅目アゲハチョウ科。春から夏にかけて出て来る。幼虫はカラタチ、ミカン、サンショウなどの葉を食べて蛹で冬を越す。東アジアの特産で熱帯には分布しない。


  揚羽蝶花をくづして去りしよりふたたび庭の
  光の閑さ            吉植庄亮


  揚羽の蝶来たりてとまりしばらくは大息つくも
  大きその羽根         尾山篤二郎


  音立てて翅搏ち合へる揚羽二羽ひとつとなりて
  谷へ墜ちゆく          島田修二


  揚羽蝶むれて大地を吸ひゐたり深くも夏の逝けり
  と思ふ            馬場あき子


  うたわずば今日はまぼろし夏が来て銀の揚羽が
  闇を断ち裂く         佐佐木幸綱


 ちなみに、揚羽蝶と限らなければ、俳句では、
     蝶墜ちて大音響の結氷期   富沢赤黄男
また、詩では
     てふてふが一匹韃靼海峡を
     渡って行った        安西冬衛
が、すぐに思い浮かぶ。