天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

百合

大船フラワーセンターにて

 ユリ科ユリ属の総称で多年草。世界には約100種、日本には15種が自生するという。姫ゆり、白百合、黒百合、鉄砲百合、鬼百合、山百合 など。万葉集には十一首に詠まれている。「ゆり」の語源は、「揺り」にあるという説がある。また漢字の当て字は、球根がたくさん寄り合っている様子からきているという。


  雲雀たつあら野におふる姫ゆりのなににつくとも
  なき心かな           山家集西行


  足引きの山のしげみの迷ひ路に人より高き白百合
  の花                正岡子規


  白百合の埋めて痩身の君の遺影別れの讃美歌の
  うたい次がれて           近藤芳美


  カサブランカわっと開きて我を見る不倫の恋など
  しておりませぬ           上田 明


  朝光のなかに蕾をひらきたり百合は世界の四隅に
  むきて               小林幸子


  帰り来ればわがもの顔に匂ふ百合ひとの影うすき家
  となりたり             生田澄江


 なお、百合(リリー)が象徴するものは、矛盾したものを含むほど多様である。「無垢、貞節、至福」「主権」「男根、豊饒」「欲望」「悔恨」「悲嘆、悲哀」等々。