天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

馬入川

馬入の渡し跡にて

 広い地域を貫いて流れる川は、場所によって呼び名が違う。山中湖を水源とし太平洋にそそぐ相模川についていえば、上流では桂川、河口近くでは馬入川と呼ばれた。
建久9年(1198年)、稲毛三郎重成が河口付近に橋を架けたが、その開通式に参加した源頼朝が帰ろうとした時、馬が相模川に飛び込んだ。そこから馬入川と呼ばれるようになった、と伝える。右の画像の絵は、広重作東海道五十三次の内の「平塚馬入川渡船」である。馬入の渡し跡に案内板として立っている。絵の中には、次の狂歌が書かれている。
 「大磯へいそぐえき路のすずのねにいさむ馬入の渡し船かな」
河口付近には、須賀港と平塚漁港がある。


     風鈴の「復興祈願」達筆に
     秋風に押されて歩く相模川
     秋風や漁師の高き笑ひ声
     秋潮の波頭崩るる烏帽子岩


  岸壁を川波打ちてさはがしき相模川河口秋風の吹く
  濁流がはこび来たりし葭屑に混じりて光る罎缶のむれ
  台風の前兆なれば黒潮が白き牙むく相模の河口
  西方に富士山黒くかすみたりカモメ鳴き飛ぶ平塚漁港


  あぢ、いなだ、しろぎす、まごち、まだい など絵に
  描き誘ふ平塚漁港


  相模川河口に坐りたまに来る大きうねりを写さむとする


  サイレンの吹鳴方法(なりかた)記す立て看は城山ダムの
  放流の時


  玄関の前にころがるひぐらしをつかめば鳴かず羽ばたき
  にけり