天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

冬雑詠(3)

江ノ島にて

 江ノ島は、散策の定番ルートのひとつだが、接岸している掃海艇を間近に見たのは初めてである。ヨットハーバーの横の灯台のある突堤に「えのしま」が横付けされており、暫く見ていると離岸して沖に出て行った。
掃海艇は、機雷を排除し、海域の安全を図るのを任務とする軍艦。掃海艇は機雷に接近しても機雷が作動しないよう、船が持つ磁気に反応する磁気機雷対策のために、掃海艇の船体は磁気を帯びない素材で作られる。海上自衛隊保有するひらしま型までの掃海艇の船体は木製であったが、えのしま型からは強化プラスチック製の船体が採用されている。「えのしま」は、ホーミング機雷に対抗するため、掃海具として国産の新型水中航走式機雷掃討具と自衛および機雷処分用の20mm多銃身機銃を搭載している。乗員48人、速力14 ノット (26 km/h)、排水量570トン。2009年に着工し、1年で竣工したというから、まだ新しい。


     竹林の小径の奥の紅葉かな
     竹林の空を見上ぐる蔦紅葉
     銭洗ふ龍神の池去年今年
     辺津宮の絵馬に願ふや大銀杏
     散る前の紅葉うるはし朝日影
     まろびくる落葉は風を伴へり
     大塔宮にバス待つ落葉かな


  走りきて茅ヶ崎沖に停まりたり富士の手前の白き釣舟
  幹は縒(よ)れ枝は捻(ひね)くれ江ノ島の森にしづまる
  椨(たぶ)の大木


  江ノ島に棲める野良猫太りたり海苔巻出せど顔そむけたり
  腸(わた)を抜く客の求めに朝獲れし鮮魚の血潮床に流るる
  影うすく生簀に泳ぐアオイリイカ片瀬漁港に買ひ手を待てり
  クリスマス・イブを見込みて道の辺に朝を仕込めるたこ焼の店
  甲板に機銃据へたる掃海艇いづくに向かふ朝の「えのしま
  ゆるゆると岸壁を離る掃海艇寒風すさぶ朝の江ノ島
  雪雲が八手ひろげてはり出だすさねさし相模の沖の西空
  江ノ島の潮風寒き極月の岩場に立ちて釣竿を振る
  撫でられて賓頭盧尊者つやめけり建長興国禅寺山門
  駄作多き百人一首に理由あり関祐二が解く定家の暗号