天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

鶫(つぐみ)

大船フラワーセンターにて

 ヒタキ科の渡り鳥。平野部の林や耕地に群棲する。秋に群をなしてシベリヤから日本へ来る。
かつては霞網で大量に捕獲され、食用にされた。現在は狩猟が禁止されている。


  雪降ればおのがね山やあれぬらん宿の梢につぐみ鳴くなり
                  紫禁和歌集・順徳院
  となみはる人になつげそ山県の朝菜の花につぐみ鳴くなり
                  柿園詠草・加納諸平
(注)加納諸平は江戸後期の国学者歌人。柿園と号した。


  鶫来てそよごの雪を散らしけり心に触るるものの静けさ
                       島木赤彦
  悲し小禽(ことり)つぐみがとはに閉ぢし眼に天(あめ)の
  さ霧は触れむとすらし           新井 洸


  傷つきし鶫なるらし笹むらの枯葉が中にうずくまり居り
                       高安国世
  銀(しろがね)の鋸の挽く夢なれとつぐみの森に雪はふり来つ
                       前登志夫
  霜厚き朝につばさの鳴るきけば待ちし今年の鶫来てをり
                       石川不二子