天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

東日本大震災一周忌

朝日新聞社刊

 去年の今日、わが国にとってとんでもない災害が発生した。東日本の大地震、大津波原発メルトダウン。この後で詠んだわが短歌を、掲載された「短歌人」から集めてみた。鎮魂にはならないが、苦しい思い出として残る。


  地震(なゐ)きたり揺れはじめたる本棚を妻とふたりで
  支へてゐたり


  地獄とはかくのごときか設計の想定外を言ふも
  おぞまし


  テレビ画面に地震警報出でたれば「幸福の木」を
  息つめて見る


  暴徒らに向けむと作りし放水車いま原子炉の
  暴走に向く


  真夜中に叫びて目覚む地震(なゐ)酔ひか余震か分かず
  熟寝(うまい)しなさぬ


  停電に何しやうもなき人々が里山道に挨拶交はす


  来たる世の津波を避くる手立てなれ万里の長城
  ノアの箱船


  母を呼ぶ声のかぼそき北上の津波の跡にさくら咲き出づ


  対策の貧弱なるを憤りテレビに叫ぶわれ
  ならなくに


  アイディアを思ひつくたび高ぶりて首相官邸
  メールを送る


  大いなる津波に耐へてのこりたる一本松は
  根を患へり


  季(とき)くれば花を咲かせる山桜大地の震ふ
  この年もまた


  花咲きてのどかなる日を狂ほしく東日本の
  大地は震ふ


  マニュアルに頼るほかなき技術者は途方に暮れぬ
  マニュアルに無く


  放射能汚染物質をどこに置く 廃坑いかにと
  提案したり


  原発の廃止叫ぶはいとやすしどこまで耐ふる
  電力不足


  豚が走り牛がさまよふフクシマの原発避難地区を映せり


 今後同様の災害が発生した場合に備えるにはどうしたらよいか? 今回の報道ビデオや記録写真集を買って、折に触れ見ることにした。そして自分のとるべき行動のシミュレーションをすることにした。特に被災地の人たちや関係者が撮ったビデオ映像の集成は、世界の財産になるはずである。