天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

わが歌集からー花(8/10)

  遠目には冬枯れの村下曽我は近づくほどに梅咲けり見ゆ

  目白きてデジタルカメラの視野に入る熱海桜の爛漫の中

  はくれんの花ちる池の底ひには濁れる色のうごめくが見ゆ

  ちる花の桜の下に並べたりこけしや根付、グラスのたぐひ

  観山の押印見ゆる掛軸は三すぢ垂れたる白藤の花

  帆柱のヨットまぶしむ入江には風になびかふ浜茄子の花

  いつよりか水を通さず捨てられし土管の中に十字科の花

  女らが駆け込みしとふ寺に咲く羊殺しのカルミアの花

  無患子(むくろじ)の小花ちらせる蜂群の羽音すさまじブブゼラを吹く

  咲き満ちてこの世見しかば時いたり槿(むくげ)の花は閉ぢてちるなり

  虎の尾の消えにし藪に咲き出づる弟切草の小さき黄の花 

  鳥兜あそこに咲くと声ひそめ教へてくれし谷戸の里人

  とりがなく吾妻山には水仙も菜の花も咲くむつききさらぎ

  母を呼ぶ声のかぼそき北上の津波の跡にさくら咲き出づ

  季(とき)くれば花を咲かせる山桜大地の震ふこの年もまた

  鬱々と里山みちをわがくれば羊歯の葉にちる山さくら花

  花咲きてのどかなる日を狂ほしく東日本の大地は震ふ

  茎のびて莟ふくらむアマリリス テレビ見る間に花ひらきたり

  原子力なくてかなはぬ電力の節約の朝さくら咲き出づ

  年金に暮せる人ら登りきて写真撮るなり富士と菜の花

  相模野にさくら菜の花咲き満ちて彼岸の人をたのしませたり

  冬型の気圧配置となりにけり風にをののくかたくりの花 

  人あまた弘川寺を訪ふ時は花の季節か紅葉の季節

  農道に沿ひて咲きたる紫陽花のあらあらしきが足柄の里

  相模線路傍にむれて青空に黄をかかげたるキクイモの花      

  移植せし銀杏大樹の切株の根方に赤き彼岸花咲く         

  道の辺にわが残れりといふごとく柘榴はちらすその朱き花

  原発の行方わからぬ日本の没日(いりひ)に向かふ皇帝ダリア

  霜月も尽きんとするに庭隅の雲南萩の花まだ枯れぬ

  あからひく朝の光を身にうけて雪に匂へる臘梅の花 

 

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カルミアの花