海棠は中国原産のバラ科の落葉低木。花木として庭木や盆栽にされる。玄宗皇帝が楊貴妃の眠たげな様子を「海棠の睡り未だ足らず」と称した故事から「睡花」「ねむれる花」の名がある。また美しい女性のうちしおれた姿を「海棠の雨に濡れたる風情」という。こうした趣を背景にした句も多い。季語は海棠で、傍題に花海棠、睡花、ねむれる花 がある。
海棠や雨をはらめる月二夜 紫暁
海棠の雨に愁眉をひらきたる 行方克己
くれなゐのつぼみはひらきあはあはとなりゆくまでの
山の海棠 福田栄一
はろばろとなりゆく人か海棠の花咲きそめし庭にわかるる
岡野弘彦