天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

雉(きじ)

野毛山動物園にて

 キジ科の鳥。「きぎす」とも言うがこれは古名。日本の国鳥である。未だ食べたことはないが、肉は美味という。
 雉をよく詠んだ歌人に岡部文夫と塚本邦雄がいる。両者の例歌を以下にあげる。


岡部文夫の歌:
  嘴(はし)にして冬の泉をのむときに雉といへども安けく
  あらむ


  ときのまのことなりしかど雪の上を火箭(ひや)の如くに
  雉(きぎす)は過ぎぬ


  しづかなるものにもあるか山中に雉の浴みけむ沙のかすけさ
  沙の上にかすかにありし雉の足跡この降る雪に隠ろひゆかむ


塚本邦雄の歌:
  籠(こ)には眠らふ雉子(きぎす)の卵いつの日かかへらなむ
  霜月のまぐはひ


  いづかたにかへりかゆかむ霰ふる街に藍青(らんじやう)の
  雉子(きぎす)をつるす


  雉食へばましてしのばゆ再た娶りあかあかと冬も半裸のピカソ