天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

わが句集からー夏(1/ 14)

平成四年 「獅子頭

     水位計赤く点滅梅雨の川

     夏の木の命の音よ聴診器

     週末の畑仕事の西瓜冷ゆ

     舎利殿は座禅道場蝉時雨

 

平成五年 「原生林」

     身ごもれり夏草刈れば土匂ふ

     番傘の下の緋牡丹雨を聞く

     吊橋や家族総出の初茶摘み

     寸刻の彼岸を見しか尾瀬の虹

     天牛や行方定めて羽ひろぐ

     ケニア熱し断食明けて鷄食へば

     翻車魚のふらり五月の東京湾

     鯖寿司を提げて若宮大路かな

     眉白き老人麦酒を飲む木陰

     額の花少女のピアス揺れてをり

     土匂ふ若葉明りの澱む土間

     跨線橋走る男の夏の影

     夏草や風に和みて浮子を見ず

     水槽のぎあまん海月透けて見ゆ

     将門の首も見守る軽親子

     芝刈りの匂ひに初夏の母ありき

     入定の僧を看取りし夏木立

     河童忌の雨は祭を流しけり

     夜ふけての蝉の寝言や庭木立

     鎌倉やぼんぼり祭の闇の恋

     機は混みて北米大陸夏休暇

     金網を入る夏雀獅子の檻

     夏草や明治の別荘無人なる

     梅雨晴間白猫顔を拭ひをり

     夏草やイグアノドンも見し空か

     くつろぎて亀の子浮かぶ読書かな

     鳩を追ふ幼子ひとり百日紅

 

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天牛