天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

観世音

天嶽院にて

 藤沢市渡内にある功徳山早雲禅寺天嶽院(てんがくいん)に行ってきた。自動車で前を通る度に気になってしかたなかったのだ。元は真言宗の古刹で不動明王を祀る「不動院」であったが、明応4年(1495)北条早雲が伽藍を建てて禅刹とし、虚堂玄白禅師を初代住職として迎えた。天正4年(1576)伽藍焼失の災に遭うが、玉縄城主が早雲菩提の為に伽藍を復興した。安政2年(1855)再び火災に遭遇して大伽藍はことごとく焼失した。ただ茅葺屋根の山門だけが焼失を免れ、現在まで残っている。現在の伽藍は、昭和51年春に着工、20余年の歳月を経て平成10年に完成したという。本尊は釈迦牟尼佛。山門に向かって右手に慈光遍照像が立っている(右の画像)。


  観音のすずしき眼みそなはし春野をゆらに月のぼりそむ
                    原田 清
  闇のなかに仄かにあかるみくる視野の慈母観音の春の
  てのひら              三枝浩樹


  水瓶(すいべやう)に春の大和のうすあかり今汲みぬとて
  佇つ観世音             永井陽子


  観音の指(おゆび)の反りとひびき合いはるか東に魚選る
  われは               大滝和子


  この観世音も或いはマリア様か知れず長き敬虔のうちに
  包まれて              清水房雄


  差しのべし手くびおとしてささえいる観音の掌に在る
  重き空っぽ             立石和正


  博物館の左右(さう)のライトに観音の千のみ手かげ壁に
  重なる               西川修子