仏像を詠む(2/4)
観音の指(おゆび)の反りとひびき合いはるか東に魚選(え)るわれは
大滝和子
この観世音も或いはマリア様か知れず長き敬虔のうちに包まれて
清水房雄
常(とは)に微笑(ゑ)む観音は母 若き日の母またさらにその母のゑみ
桑山則子
差しのべし手くびおとしてささえいる観音の掌に在る重き空っぽ
立石和正
まぎれ来しこの世の事とうべなひて千手観音に向ひ立ちをり
松坂 弘
千手観音千手と言へど遊ぶ手の一手なからむことわれを搏つ
小野興二郎
観音のかざせる千手(せんじゆ)高々とひとつは丸き宝珠をささく
大悟法 進
千の手の救いもたらす観音にふつつかなわが掌を合せたり
森 佐知子
大滝和子の作は、東方の国日本に魚を選ぶ自分の手に観音の指の反りを連想したという。もしかしたら題詠であったのか。
立石和正の作は、情景がはっきりしない。そのために何を言いたいのかも不明。
小野興二郎の作は、囲碁か将棋の場面のようでもある。もちろんそうではなく、多くの人々を救うための手であり、遊びに使うような余分な手はないという。