天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

天城

天城山隧道

 静岡県伊豆半島中部の天城山とその麓の地域の略式名称である。湯ケ島町が温泉郷として有名。「あまぎ」という音韻がなんとも美しい。小説では、川端康成の「伊豆の踊子」、井上靖の「しろばんば」、松本清張の「天城こえ」等の舞台になり、演歌「天城越え」(作詞・吉岡治、作曲・弦哲也、歌手・石川さゆり)で更に有名になった。特に天城山隧道は主役の舞台である。あまり知られていないが、天城山は火山であった。今でも幽玄な樹木の景色が見られるが、一般の人はほとんど入らない。
 私自身の思い出では、天城山隧道を夏のさかりに歩いたこと、握り鮨の山葵が大変旨かったこと、もちろん浸かった温泉で夕日を眺めたことも忘れられない。


  天城山わが越ゆる道の杉の木に降り積る雪は枝垂れそめたり
                   若山牧水
  杉の葉に雪しろく積む天城山峠のみちを踏みのぼりたり
                   松村英一
  草枯れのいづれの山を人に問ひても天城の山のつづきなりといふ
                   島木赤彦
  ひさかたの天城の山葵競ひ売る声は僅(はつ)かの媚びを孕めり
                   森本冶吉


  道がつづら折りになって
  いよいよ天城峠が近づいたと思うころ
  雨足が杉の密林を白く染めながら
  すさまじい早さで麓から
  わたしを追って来た。
               伊豆の踊子文学碑


 NHKテレビ・新日本風土記天城越え」を見て、あらためてすばらしいところと感じた。もっと詠われてしかるべき歌枕である。右上の画像は、NHKのテレビ映像から切り出した。