天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

早春賦(3)

検校像(江ノ島にて)

 藤沢の遊行寺では、月例の骨董市が開かれていた。元使塚のある常立寺では紅白の梅が七分咲きであった。江ノ島・奥津宮の境内には山田検校銅像があり、その胸元に白梅が影を落としていた。日蓮上人刑場跡という龍口寺には史跡巡りの人たちが大勢来ていた。久しぶりに大船観音を訪ねて胎内に入った。境内の頑丈な燈籠には原爆の火がともっている。


     紅梅や骨董市に招き猫
     白梅や老いたる幹の芯は洞
     白梅の枝垂るる先に元使塚
     水仙の花がとりまく光松
     白梅は枝垂れ紅梅天を突く
     白梅の影胸元に検校像
     梅の香や龍が水吐く手水鉢
     柄杓から水琴窟へ春の水
     街路灯白きポールに春の鳶
     紅白の梅咲きならぶ六地蔵
     怨念の炎ともれり梅の花


     
  咲きみてる白梅が枝を支へ立つ老いたる幹に洞ひろがれり
  江ノ島へ渡る砂地が引潮の弁天橋の下に現はる
  観音の白き面(おもて)に紅さして梅咲きにけり青空の下
  原爆の火は怨念の炎(ほむら)とぞ観音菩薩の山にともれる