天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

師走の里山

藤沢市新林公園にて

 里山はおおかた紅葉の時期を終えて眠りについた。その中にまだ黄葉を保っている樹木がある。近づいて仰ぎ見ると地味ながら黒い幹枝と黄色の枯葉のコントラストが見事で、豪華な日本画の趣。山道を辿れば落葉を終えた林はさっぱりとして潔い感じがする。


     丹沢や初冠雪に輝ける
     幹枝の黒きに付ける枯葉かな
     落葉して林すがしき師走かな
     真下からくぬぎ黄葉を見上げたり
     黄葉に鎮まる墓地を見下せり
     橋の上を鶺鴒歩く師走かな
     里山や落葉が蓋ふ獣落し
     頭が並ぶ火の見櫓と雪の富士


  公園のベンチに座る老人の前に寄り来て佇む鳩は
  池の上の宙に漂ふユスリカは師走の朝の光を返す
  見る限り雲なき西の青空に初冠雪の丹沢山
  一夜明け初冠雪の降りたれば近づきがたし大山の峰
  極月の林の木々の潔さ枯葉落して新年を待つ
  冬枯れの林に眼鏡落したる主はいづこさまよへるらむ