天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

猿廻し

藤沢・遊行寺にて

 現在は大道芸として季節を問わないが、一昔前までは正月に猿を背負って家々を廻り、太鼓を打ちながら猿に芸をさせて祝儀を貰う形態であったらしい。従って俳句では「猿廻し」は新年の季語である。傍題に、猿曳、猿使、猿舞師、舞猿、太夫猿 などがある。


     猿廻し去る時雪の戸口かな     原 石鼎
     舞猿の箱引きずつて銭を乞ふ   岡崎泊葉子
     よき顔をして舞猿のさびしさよ  今井杏太郎


  ふところに小猿抱きて猿曳の雨にぬれゆく夕まぐれかな
                   佐佐木信綱
  夕暮のつかれはてたる身ながらもせむ方なげに舞ふ
  小猿かな             佐佐木信綱


  やしなふもやしなはるるも猿曳のいづれか殊に哀れ
  なるべき             佐佐木信綱


  猿曳を宿によび入れて、年の朝 のどかに瞻る。猿の
  をどりを              釈 迢空


  遠き世の安倍の童子のふるごとを 猿はをどれり。年の
  はじめに              釈 迢空