天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

卵(続)

わが身辺から

 2012年10月19日のブログに続き、卵の歌をとりあげる。老若男女誰にも身近な食材なので、短歌作品も大方分りやすい。ただし、以下の佐佐木幸綱の歌をどう鑑賞するか、興味深々である。


  酢のなかに沈める卵寒一夜苦しみの泡吐き続けたり
                   山下雅人
  まざまざと眺めてみれば卵とは争うことを知らぬ形よ
                   小塩卓哉
  死を抱ける寒卵の白そをめぐり深夜の水の私語つづきたり
                  佐佐木幸綱
  ふはふはの溶き玉子掬ふ木の匙の遠つ世のあはれ高安の女
                   渡 英子
  まっ白いご飯に卵ぶっかけてまぶせばことり心が点る
                  石田比呂志
  三月の雨しづかなり生みたての卵二つを双の手に受く
                   雨宮雅子
  積み上げし卵が或る夜いつせいに孵(かへ)りてをらむ
  スーパーの棚           上田一成


  鳥小屋のぬくき卵をすかーとに包みてそろそろ歩むは
  たのし              須田昌子


  鉢に割る卵の黄味の緑(あを)み帯び庭木の枝の芽吹く
  けはひす             山崎あさ