天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

石の歌(4)

さざれ石(師岡熊野神社にて)

 無機質の鉱物として扱うことで、他のものを際立たせる効果が出る。


  夕霧に石を投ぐれば谷間より青竹のこゑ澄みて帰りぬ
                     前登志夫
  対岸に組まるる石の限りなく声なきものに茜は激し
                     安永蕗子
  石の蓋おもたき下に入るものを人と思ひきまつぶさに見き
                     河野愛子
  証されているごとき後退ポケットについに投げざりし石くれ
  ふたつ                岸上大作


  乾きたる石のおもてに雨滴滲みてゆくごとき愛を欲りすも
                   蒔田さくら子
  心なく投ぜし刹那きらめきて永劫湖底の石と沈めり
                    沼波万里子
  両足が覚え込みたる農の道この石いつもひだりが踏みぬ
                     脇中範生