無機質の鉱物として扱うことで、他のものを際立たせる効果が出る。
夕霧に石を投ぐれば谷間より青竹のこゑ澄みて帰りぬ
前登志夫
対岸に組まるる石の限りなく声なきものに茜は激し
安永蕗子
石の蓋おもたき下に入るものを人と思ひきまつぶさに見き
河野愛子
証されているごとき後退ポケットについに投げざりし石くれ
ふたつ 岸上大作
乾きたる石のおもてに雨滴滲みてゆくごとき愛を欲りすも
蒔田さくら子
心なく投ぜし刹那きらめきて永劫湖底の石と沈めり
沼波万里子
両足が覚え込みたる農の道この石いつもひだりが踏みぬ
脇中範生