天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

雨のうた(7)

歌川広重の浮世絵から

 高安国世は、リルケを専門とするドイツ文学者。アララギに入会し土屋文明に師事する。リアリズムに基礎を置きながらも、現実には存在しないものを表現の対象に求めるなど、常に新しい表現を求め続けた。ただし、以下の例歌はごく分り易い。短歌結社「塔」を創設。



  乾きたる土をうるほす雨となり音たてて降れ寒あけの雨
                      大坂 泰
  雨の中に立ちたる石と臥す石と濡れわたりつつ根の際くらし
                      植松壽樹
  感情の起伏の如く来ては去る雨といえども暖かき雨
                      高安国世
  雨はれて山の中腹にいる雲のしろじろとして湖に影ひく
                      高安国世
  泥まみれに踏みにじられしガラスの屑どしゃぶりの雨に
  蒼くきらめく              武川忠一


  孤立する追わるる果ては知るという彼の持つ旗雨滴に垂れて
                      武川忠一
  血と雨にワイシャツ濡れている無援ひとりへの愛うつくしくする
                      岸上大作
  雨の中福崎駅の構内に列車も濡れて停車は長し
                      岸上大作