天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

芭蕉(2)

横浜市俣野別邸庭園にて

 台風に広い葉が煽られてなびき破れるさまは痛々しく、破(や)れ芭蕉と呼ばれ、俳句では秋の季語になっている。俳人松尾芭蕉の俳名は、深川の自宅の庭にあった芭蕉からとったという。


     刃こぼれの一剣似たり破芭蕉   水原秋櫻子
     相隣り合ひて互に破芭蕉      倉田紘文
     破芭蕉一気に亡びたきものを    西村和子


  大き芭蕉葉かげにふかく花持つか地に目立ちてぞ苞(ほう)を
  おとせる                中村憲吉


  芭蕉葉はのきに植ゑしが夜のあめにあり処(ど)しらるる音
  いちじるし               中村憲吉


  葉ごもりに咲くと見えねど花芭蕉百日あまりを散りつづきけり
                      中村憲吉
  しぐれ降る夕庭くらし破れ芭蕉おもくゆすれて風たちそめつ
                      今井邦子