台風に広い葉が煽られてなびき破れるさまは痛々しく、破(や)れ芭蕉と呼ばれ、俳句では秋の季語になっている。俳人・松尾芭蕉の俳名は、深川の自宅の庭にあった芭蕉からとったという。
刃こぼれの一剣似たり破芭蕉 水原秋櫻子
相隣り合ひて互に破芭蕉 倉田紘文
破芭蕉一気に亡びたきものを 西村和子
大き芭蕉葉かげにふかく花持つか地に目立ちてぞ苞(ほう)を
おとせる 中村憲吉
芭蕉葉はのきに植ゑしが夜のあめにあり処(ど)しらるる音
いちじるし 中村憲吉
葉ごもりに咲くと見えねど花芭蕉百日あまりを散りつづきけり
中村憲吉
しぐれ降る夕庭くらし破れ芭蕉おもくゆすれて風たちそめつ
今井邦子