天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

夕陽のうた(2/10)

越前海岸の夕陽

 田安宗武は、八代将軍徳川吉宗の次男、松平定信の父。徳川御三卿田安家の祖。少年期より和歌に親しみ、荷田在満(かだのありまろ)に古学・歌道を学ぶ。次の歌は、かれが少年期に詠んだもの。
 与謝野晶子の歌では、後年、彼女は五句目 「夕日の岡に」 を 「岡の夕日に」 と改めている。イメージとしてはきわやかになるが、韻律の面で段差を生じる。



  乱れ咲くちぐさの花の色まして帰るさ惜しき野路の
  夕ばえ               田安宗武


  鳳仙花照らすゆふ日におのづからその実のわれて秋
  くれむとす             金子薫園


  山の上に残る夕日の光消えて忽ち暗し谷川のおと
                    島木赤彦
  金色のちひさき鳥のかたちして銀杏ちるなり夕日の岡に
                   与謝野晶子
  木津川の河原竹藪ゆふ日せり砂のほてりに堪へつつ歩む
                    川田 順
  黒き岩はみな触覚をもてるごとし夕日あかあか岬に
  したたる              前田夕暮


  海の黒さよ、ほそぼそとしてうかびたる佐多(さた)の
  岬の夕日の濃さよ          若山牧水


[注]右上の画像は、「死ぬまでに一度は見るべき!「日本の夕陽百選」に
   選ばれた美しすぎる夕日9選 」から借用した。
    https://retrip.jp/articles/4913/