天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

白鳥の歌(7/9)

憩い

 水原紫苑の歌は、歌集『世阿弥の墓』にある。世阿弥の言葉「白鳥花を含む、これ幽玄の風姿か」を踏む。白鳥が蛇に近づくとは、水原紫苑のエロス感覚であろう。


  水を出でおおきな黒き水掻きのぺったんぺったん白鳥がくる
                    渡辺松男
  白鳥はふっくろと陽にふくらみぬ ありがとういつも
  見えないあなた           渡辺松男


  白鳥の発つは映して有象無象千羽の鴨は言にも乗せぬ
                    斎藤 史
  雪雲の切れて動くと見えながら近づきて来る白鳥の群れ
                    安部洋子
  翼きしむ音は残りて白鳥ら一筋の遠き光となれり
                   倉林美千子
  〈白鳥、花をふふむ〉 一瞬にして白鳥はもつとも蛇に
  近づくならめ            水原紫苑


  冬を惜しむ白鳥と冬に倦むわれと星群るる夜を頒かち眠らん
                    松田久恵


[注]右上の写真は、次の「水鳥達の写真」から借用した。
http://big-swan.com/category/%E7%99%BD%E9%B3%A5%E3%81%AE%E5%86%99%E7%9C%9F/