果物のうたー林檎(2/3)
りんごの花のゆふべは霞(かす)むほの明りたどりて何に逢はむとはする
斎藤 史
*作者の心の在り様が分かる気がする。
青りんごあをく削がれし夜の卓 たちまち錆びて夏のとき過ぐ
斎藤 史
黄金(きん)いろの林檎の肌にたはむれの如く一刷毛の紅ある不思議
田谷 鋭
リンゴふたつ両手に握りアトムのようだと言われるまで待つ
高瀬一誌
*高瀬一誌の短歌の特徴のひとつだが、第三句を省略している。漫画の主人公・
鉄腕アトムが両手にリンゴを持っているシーンを私は見たことがない。
外観の印象だろう。
めぐりあへず林檎三つを求むれば果実の目方量(はか)られたりき
前登志夫
*「めぐりあへず」の目的語が人なのか物なのか不明。店先で目方売りの林檎
三つを買ったのだが。
日の当る林檎おかれし卓あればなべて平安といふを憎みつ
尾崎左永子
噛むやがて林檎の酸ぞ沁みとほる若きものはかく新鮮にして
植松壽樹