天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

時間を詠む(3)

日時計

 日時計の原理は、地面に垂直に棒を立て、その影が変化する様子(影の長さや角度)で一日の移り変わりを見ることである。
 小中英之の歌は、読者に死までどれだけの時間が残されているかを考えさせる。


  自動改札通した切符胸元へこのうす青き時間を照らす
                    尾崎まゆみ
  あれは滝ここは紅葉とささめゆき降るやうならむ旅の時間は
                    池田はるみ
  古書店に図書をひらけば紙臭ひ似て非なる時間ありと思はす
                     塚本 諄
  ひややかな晴天に架かる歩道橋人渡らざる長き時間あり
                     葛原妙子
  微動なき機をかすめをり莫大の時間のかたまり 闇のかたまり
                     葛原妙子
  今しばし死までの時間あるごとくこの世にあはれ花の咲く駅
                     小中英之
  ひとときの時間を止めて眺めいるタール1ミリグラムの烟(けむり)
                     田島邦彦