時間を詠む(5)
燃焼時計(火時計とも)は、例えば蝋燭や線香に火を点けてその短くなってゆく様子を時間に対応させる仕掛けである。燃える速度が一定であるためには、媒体は均質でなければならない。
紀元前の中国ですでに使用されていたらしい。
時間を意識した時こそ歌を作るべし、と以下の作品が教えてくれる。
古き面(めん)のうつろの眼(まなこ)を通りぬけ帰らぬものを
時間といふなり 真鍋美恵子
変り玉いまわれは白妻は黄に口中にある時間の硬さ
石本隆一
にんげんの時間は背骨のなかにある樅を見上げてわれ息深し
渡辺松男
霧うごき木の花の匂ひ流れたり久遠(とは)の時間のなかの
ひととき 雨宮雅子
触つてもよいか その手にふかぶかと過ぎし時間は甘美
なればなり 日高尭子
からすうりのレースの花がしゆつとひらき こんなにしづか
地上の時間 日高尭子
おぼろなる時間の渚を妻と行けば咲きたわみゐる桜のくれなゐ
米田 登