河童と我鬼 (8/10)
□子供を詠んだ俳句
芥川龍之介は、三人の子供を可愛がっていたことがよくわかる。
負うた子のあたま日永に垂れにけり 大正六年
大正六年は結婚前なので、よその子の嘱目詠だろう。
麦ほこりかかる童子の眠りかな 大正十一年
長男比呂志のことであろう。後に俳優になった。
咳ひとつ赤子のしたる夜寒かな 大正十二年
小春日に産湯の盥干しにけり 大正十二年
これら二句は、前年に生まれた次男多加志のことか。父に似て文学を好んだが、
昭和二十年四月にビルマで戦死。
臀立てて這ふ子おもふや笹ちまき 大正十四年
吾子(あこ)が自由画の目白うららか 昭和元年
ひと向きに這ふ子おもふや笹ちまき 昭和元年
たんたんの咳を出したる夜寒かな 昭和元年
春返る支那餅(しなもち)食へやいざ子ども 昭和二年
ひたすらに這(ば)ふ子おもふや笹ちまき 昭和二年
以上六句は、大正十四年に生まれた三男也寸志のことであろう。後に作曲家になった。
一人子の草履干さばや今年藁 年次不詳
この句には、「昼中の砧に」の詞書があるが、どの子のことか不明。