冬を詠む(1/9)
冬の語源は、「ひゆ(冷)」。日本では、新暦で12月から翌年2月までの期間を差す。
秋の田のわが刈りばかの過ぎぬれば雁が音聞ゆ冬かたまけて
万葉集・作者未詳
冬過ぎて春来るらし朝日さす春日の山に霞たなびく
万葉集・作者未詳
霜枯れの冬の柳は見る人の蘰(かづら)にすべく萌えにけるかも
万葉集・作者未詳
月数(よ)めばいまだ冬なりしかすがに霞たなびく春立ちぬとか
万葉集・大伴家持
妹が門入(かどい)り泉川の常滑(とこなめ)にみ雪残れりいまだ冬かも
万葉集・柿本人麻呂歌集
山里は冬ぞさびしさまさりける人目も草もかれぬと思へば
古今集・源宗于
神無月ふりみふらずみ定めなきしぐれぞ冬のはじめなりける
後撰集・読人しらず
一首目: 「刈りばか」は刈り取る分担量のこと。よって一首に意味は、「秋の田の 我が収穫を刈り終えてしばし過ぎれば雁の声が聞こえてくる。冬が近づいて。」
大伴家持の歌: 「月数の上では十二月だから 今はまだ冬。とはいえ、あたりには霞がたなびいている。すでに立春を迎えたことでもある。」
柿本人麻呂歌集の歌: 「妹が門、入り出づ」と「泉川」は掛詞。泉川は奈良県の木津川のこと。「常滑(とこなめ)」は、水苔などがついてツルツルした川石のこと。よって一首の意味は、「妻の家の門を出入りの泉川の石に雪が残っている。まだ冬なんだよ。」
後撰集の歌: 「降りみ降らずみ」は、降ったり降らなかったり、という意味。