犬を詠う(1/12)
犬の歌(犬の歴史も)については2012年7月21日のブログでいくつか紹介したが、今年は戌年でもあるので、重複は除いてあらためて「犬を詠う」シリーズとして集めてみたい。
庭の外を白き犬ゆけり。
ふりむきて、
いぬを飼はむと妻にはかれる。 石川啄木
しつけよき犬を撫でつつ狎れがたし。この犬も 我が喰ひ分を
殺(そ)ぐ 釈 迢空
青いペンキはあをい太陽を反射(かへ)すから犬の耳朶が石に躓く
加藤克巳
セパードは長く吠えをり病室の灯を消してあはき虚しさは湧く
中城ふみ子
秋とほる日ざしの路地に伸ぶるところむく犬は咽喉の毛を掻きゐたり
中城ふみ子
冬になれば毛深くなりしわが犬と外套を着し我と歩めり
高安国世
曲り角知り合いの犬と出会いたり間のわるき顔を一瞬したり
高安国世
釈 迢空の歌からは、戦時の貧しい生活を感じる。
中城ふみ子の一首目: セパードは何に対して吠えているのか、対して病身の自分に虚しさを感じる。
加藤克巳の歌は、上句が下句の原因のような構造だが、何を訴えたいのか不明。
高安国世の二首目は、犬の「間のわるき顔」が見えてくるようで面白い。