天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

竹林

伊勢原市大山の麓にて

 竹の林、竹藪のこと。俳句で、「竹の春」は、秋の季語。「竹の秋」といえば、春の季語。竹の葉が茂る時期と散る時期からきている。竹の葉は通常の広葉樹の葉とは逆の推移をするのだ。


     坂かけて夕日美し竹の春        中村汀女
     さわらびの皇子の寺なる竹の春     沢木欣一
     化野(あだしの)や風とあそびて竹の春   細川加賀


  夜空より吹きおろしざま吹き入りて竹群ふかくひびきゆく風
                      宮 柊二
  かにかくに我はなかなか衰へず孟宗竹林の風にむかひ行く
                      前川佐美雄
  竹林を鳴らして風のとどろけば冬空すでに鞭のごとしも
                      石川一成
  溝川に沿ひて陽あたる竹むらのまのあたり母のゐるかとおもふ
                      上田三四二
  春香をふふめる風を孕むゆえ琅玕は鳴る竹の林に
                      石田比呂志
  竹むらのそよぎさやけく霜に踏む道に時間の流れはやまず
                      久泉迪雄
  極月の竹のはやしに目をつむりわれ消してをり時は旅人
                      伊藤一彦
  まつ暗な竹の林のむかうにもまつ暗な竹たちが立ち月のない夜
                      河野裕子