文(房)具を詠むー原稿用紙・地球儀
五百枚の原稿用紙買ひ持ちていまだ紙なる重さを運ぶ
大西民子
原稿用紙を鶴にカッパに折りたたむコタツの卓にもの書きあぐね
原稿用紙の桝目はみでる「鬱」の字は手足をたたみ恐縮している
小高 賢
書き進む原稿用紙に手の汗の幾度か滲(にじ)む夜に入りても
神作光一
置忘られ埃かむりし地球儀をまはしてをれば細き鶸の声
*鶸(ひわ): 日本産のアトリ科の鳥のうち、マヒワ、ベニヒワ、カワラヒワの三種の総称。
白い地球儀のかげに海べがあれば少女よ日傘をひろげよ
*中野嘉一(1907年ー1998年)は、詩人、歌人、精神科医(太宰治の主治医)。一首はまことに詩的な内容である。
夜床より仰ぐ小暗き机上には花のごとくに地球儀が立つ
大山敏夫
地球儀に唇(くち)あてているこのあたり白鯨はひと知れず死にしか
大滝和子
*幻想的な内容。特に「白鯨」としたところ。