天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

幻想の父(11/12)

歌集『風雅黙示録』

■子が父になった場合。作者は祖父の立場。
長男・青史夫妻に子供ができたことを契機に詠んだものと思われる。
 父となる汝おそろし熱湯のシャワーしたたるタイルの薔薇繪
                       『閑雅空間』
薔薇繪のタイルの浴室で熱湯のシャワーを浴びたのは、父となる汝=子であったと解釈すれば、猛々しい性格を心配している歌になる。作者は子の後で浴室に入って、シャワーの滴りから子が熱湯のシャワーを浴びたことを知ったのだろう。
 若き父、幼女を騎(の)せてあへぎゐる子供部屋寒雷の香りが
                      『風雅黙示録』
祖父の作者から孫子の様子を詠んだもので、まことに微笑ましい。「寒雷の香り」とするところがいかにも塚本らしい。