和歌の鳥(9/9)
新古今集に、鷹(はし鷹)の歌は二首、鷲の歌は一首ある。鷲は、辞書によれば、「タカ目タカ科に属する鳥のうち、大形種の総称。小形種をタカというが明確な区別点はない。」とある。鷹は日常的に眼にする鳥であったが、鷲は仏教の伝説と結びつて考えられた、と推察される。
とやかへる鷹の尾山の玉椿霜をば経とも色はかはらじ 前中納言匡房
はし鷹の野守の鏡えてしがなおもひおもはずよそながら見む よみ人知らず
鷲の山今日きく法の道ならでかへらぬ宿に行く人ぞなき 慈円
一首目: 「鷹の尾山の椿は霜をかぶっても色は変わらない。」「とやかへる」は鷹の尾山に懸かる枕詞。とやは鳥屋で鳥の巣。鷹が羽の抜け替わりの時に巣に帰るということを指している。
二首目: はし鷹は、鷹狩に用いる小さい鷹。昔雄略天皇が狩をなさった際、はし鷹が飛び立ったまま戻らないので、禁猟の野を守る野守に捜させたところ、「樹の上に待る」と答えた。それは前にある水に映ってみえたのだ。これが野守の鏡の由来。
世阿弥作と言われる能「野守」は、大和国春日野に伝わる伝承をもとにした鬼の能だが、この和歌をテーマにしている。
三首目: 「インドの霊鷲山(りょうじゅせん)で釈迦が説いた教えを今日聞くが、この道以外では悟りの境地にたどり着く人はいない。」
[参考]万葉集の鳥の歌は、「たのしい万葉集: 鳥を詠んだ歌」
https://arttags.net/manyo/animal/birds.html を参照。
古今集: https://ja.wikisource.org/wiki/古今和歌集
新古今集: http://www5c.biglobe.ne.jp/~n32e131/skokin/haru01.html
またこのシリーズで掲載した鳥の画像は、webから借用した。
鷹 鷲