和歌の鳥(5/9)
以降の4回にわたっては、三歌集(万葉、古今、新古今)で、新古今和歌集だけに詠まれた固有の鳥の歌をとりあげる。先ずは、鶉(うずら)から。新古今集には、以下の四首がある。
鶉は、キジ科の鳥。草原にすみ、地上を歩き回る。古くは鳴き声を楽しむために飼育されたという。
秋を経てあはれも露もふかくさの里とふものは鶉なりけり 慈円
いり日さすふもとの尾花うちなびきたが秋風に鶉なくらむ 久我通光
あだに散る露のまくらに臥しわびて鶉なくなり床の山かぜ 俊成女
鶉なく交野にたてる櫨もみぢ散らぬばかりに秋かせぞ吹く 藤原親隆
一首目: 「秋が過ぎ、飽きられてしまって、悲哀も露も深くなる深草の里に訪ね来るのは人ではなくて鶉であった。」
二首目: 「入日差す山のふもとのススキの花が打ちなびき、誰に飽きられたというのか秋風が吹く中、鶉が鳴いているようだ。」
三首目: 「もろく散る露に濡れた草の枕に臥し悩んで、辛そうに鶉の鳴いているのが聞こえる。床の山風に。」
四首目: 交野は、大阪府枚方市・交野市一帯の丘陵。平安時代には皇室の遊猟地で桜の名所。歌枕。
鶉は、鄙びた場所を象徴しているようだ。