感情を詠むー「憎む」(4/5)
論理にてつひに結ばぬわれわれの憎悪に結ぶ危ふさにあり
小野茂樹
*論理では結ばれない我々の仲だが、共通の憎悪では結ばれる仲、という。
たはやすく憎に移らむ心かと今日あれてゐる自が声をきく
河野愛子
*「あれてゐる」とは、荒れてゐる ということだろう。
雪降りの夜をはしゃげる如くして人間殴り合うぞ路上に
浜田康敬
若ければ狂に猛りし激情を無様(ぶざま)にわれも激して憎む
武川忠一
苛々と人をののしる父の性(さが)憎々しき性をわれもまた持つ
杜澤光一郎
ひそやかに亀裂干潟に続きいむ<残暑>きみへの憎しみふとる
米田憲三
*上句は下句の暗喩、という構造。
在る者にまた亡き者に憎しみを残すといへど漸くに老ゆ
岡部文夫