命の歌(13/17)
寂かなる鉛の部屋にゐてわれは放射能浴ぶ命の限り
*病気(例えば癌)の治療の場面なのだろうか? 不気味な情景である。
人の世の命のかぎり在りにしを亡きを亡しと思ふ境に至り得ず
命すぎ何をつくろはむこともなし皮をはぎ肉をすて骨をくだけよ
*なんとも凄まじい歌だ。命が無くなれば、つくろうことなど何もない、皮・肉・骨などどう処理しようとかまわない、という。
火中(ほなか)にはあらざるわれも命濃し茫茫として寒鮒食いつ
伊藤一彦
譫(うはごと)言いふ妻の額に光る汗いのりにしかばああ命あり
*なんとも哀切な夫婦像である。
うてばひびくいのちのしらべしらべあひて世にありがたき二人なりしを
若山喜志子
*若山牧水の妻・若山喜志子は夫の放浪癖をよく理解して一生を連れ添ったものと感心する。
うち振れば秋口の風を断(き)りて響(な)るわれに愛しき寿(いのち)の杖は
木俣 修
死ねばみな空なるものをなにしかもいまもはげむやいのちにかけて
木俣 修
やうやうに風呂よりあげて背負ひゆく姑の命をわが背にのせて
島内美代
*老人の介護の一シーンをリアルに詠って迫力がある。