天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

身体の部分を詠むー首(2/3)

  ぬれ雑巾たたきつけグシとつぶれたる感触に聞き首はきられつ
                       大家増三
*斬首の際の感触を詠んでいるようだが、作者は斬首の場に立ち会ったのだろうか。

  陽を背にし砂丘に佇(た)てば影のびて首から上は海に没しぬ
                       山名康郎
  鋸の熱き歯をもてわが挽きし夜のひまはりつひに 首無し
                       寺山修司
*鋸とひまわりの極端な対比だが、具体的に何を暗喩しているのか。

  鶴の首夕焼けておりどこよりもさびしきものと来し動物園
                       伊藤一彦
*動物園がどこよりもさびしいと思って来た、という。

  あるときの部屋は檻にて老いしわれ右を見、左を見、首をあげ、首を垂れ
                       鈴木幸輔
*老人のいる部屋が、ある時、檻のように感じられたのだ。老人のやり場のない無力感か。

  けだるげにあおむく女の首長く東洋の海あおあおとある
                       沖ななも
  いま一気に首を絞めればあふれ出す双つ体躯(からだ)の海かとおもふ
                       辰巳泰子
*「双つ体躯(からだ)の海」が不可解。また、首を絞めれば海があふれ出す、というが、どこからなのか。

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砂丘