天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

北原白秋の新生(1/9)

はじめに
 『雲母集』は、大正二年五月から翌年二月までの約九ヶ月間を相州三浦三崎に過ごした生活の所産である。白秋の生涯中最も重要な一転機を画したもので、初めて心霊が甦り、新生がこれから創まった、と白秋自身述懐している。大正四年八月刊行。ちなみに、白秋の今生最後の言葉が、「新生だ」であった。白秋が生涯に二度使ったことになり、『雲母集』の重要さがわかる。

  [注]白秋は昭和17年11月2日、糖尿病と腎臓病のため阿佐ヶ谷の自宅で逝去。
     享年57。
 白秋研究は様々な切り口から数多くなされている。本評論の主眼は、これらの成果を踏まえて『雲母集』をより深く理解するためのキーワードをまとめて提示し、代表歌を鑑賞することにある。

f:id:amanokakeru:20200228003908j:plain
f:id:amanokakeru:20200228004117j:plain
三崎見桃寺(白秋仮寓跡)の歌碑 <寂しさに秋成が書読みさして庭に出でたり白菊の花>