蕪村俳句と比喩―活喩(擬人法)(6/8)
葉がくれのはづかしがほや種茄(たねなすび)
唐きびのおどろき安し秋の風
沙魚(はぜ)を煮る小家や桃のむかし皃(がほ)
*沙魚を煮ている小家の庭には、桃の木が昔を思わせるなつかしい様子で立っている。
きくの露受(うけ)て硯(すずり)のいのち哉
うら枯やからきめみつるうるしの木
戸をたたく狸(たぬき)と秋をおしみけり
秋おしむ戸に音づるる狸(たぬき)かな
みのむしの得たりかしこし初しぐれ
逃(にげ)水(みづ)の逃(にげ)げそこなふて時雨哉
*逃水: 川の水が地下にしみ、流れが地上から消える現象。句は、時雨のせいで川の水が消えずにあるのを、逃げ損ねた、と洒落た。
みのむしのぶらと世にふる時雨哉
しぐるるや山は帯するひまもなし
*謡曲「白楽天」の中の「白雲帯に似て山の腰を囲る」の漢詩句を踏む。山の擬人化。