天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

蕪村俳句と比喩―活喩(擬人法)(7/8)

     化(ばけ)そうな傘(かさ)かす寺の時雨哉
*時雨がきてお寺が貸してくれた傘の状態が、おんぼろで化けそうに見えたのだ。

     夕しぐれ蟇(ひき)ひそみ音(ね)に愁(うれ)ふかな
     子を遣(つか)ふ狸(たぬき)もあらむ小夜(さよ)時雨
     こがらしや岩に裂行(さけゆく)水の声
     日あたりの草しほらしく枯(かれ)にけり
     夢買ひに来る蝶(ちよう)もなし冬牡丹
*寒いさなかに咲いている冬牡丹に寄ってくる蝶は、さすがにいないのだ。

     初しもや煩(わづら)ふ鶴(つる)を遠く見る
     火桶炭団(たどん)を喰(くら)ふ事(こと)夜ごと夜ごとにひとつづつ
     武者(むしや)ぶりの髭(ひげ)つくりせよ土(つち)大根(おほね)
     島山や夜着の裾(すそ)より朝千鳥
     草も木も小町が果(はて)や鴛(をし)の妻
*小町が果: 小野小町が老残の果てに野ざらしとなった伝説。句は、草木の枯れ果てた様を小町の果てに喩え、それとは対照的な美しい鴛の夫に寄りそう鴛の妻をもってきた。

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