天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

蕪村俳句と比喩―活喩(擬人法)(5/8)

     篠掛(すずかけ)や露に声あるかけはづし
*篠掛: 修験者が衣の上に着る麻の衣。句は、謡曲・安宅などを踏む。山伏が篠掛を脱ぎ着するたびに露のこぼれるのを、「声ある」と表現した。

     人を取(とる)淵(ふち)はかしこ歟(か)霧の中
     水落(おち)てほそ脛(はぎ)高きかがしかな
     笠(かさ)とれて面目(めんぼく)もなきかがしかな
     三輪(みわ)の田に頭巾(づきん)着てゐるかがし哉
     流(ながれ)来て引板におどろくサンシヤウ魚(うを)
*引板(ひた): 流れに板をしかけ音を立てて鳥獣を威す装置。秋の季語。

     気みじかに秋を見せけり蕃椒(とうがらし)
     底のない桶(おけ)こけ歩行(ありく)野分哉
     人の世に尻(しり)を居(す)えたるふくべ哉
     腹の中へ歯はぬけけらし種ふくべ
*種ふくべ: 種を採るための瓢箪。成熟したら蔓から切り離して十分乾燥させた後に種を採る。句は、種瓢が種の音を立てるのを、腹の中へ歯が抜け落ちた老人に見立てた。

     葉に蔓(つる)にいとはれがほや種瓢
*いつまでも残されている種瓢が葉や茎に迷惑がられている、と擬人化。

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サンシヤウ魚