天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

心を詠む(9/20)

  ことのはにいでしうらみはつきはてて心にこむるうさになりぬる

                 玉葉集・京極為兼

  あやしくも心の中ぞみだれ行く物思ふ身とはなさじと思ふに

                風雅集・祝子内親王

*「不思議にも、わが心の内が思い乱れてゆく。恋をして思い煩う身にはなすまいと決めていたのに。」

 

  ことのはの道こそ憂けれさらでやは心のきはを人にしらせむ

                       宗祇

京極為兼とは反対の気分を詠っているようだ。

  見わたせば心は色もなかりけり柳桜の春の曙

                     烏丸光広

藤原定家の名歌「見渡せば花も紅葉もなかりけり 浦の苫屋の秋の夕暮」の本歌取り

  わがこころ君に知れらばうつせみの恋の籬(まがき)よ越えずともよし

                    伊藤佐千夫

  わざはひかたふときことか知らねどもわれは心を野晒しにする

                    与謝野晶子

*「心を野晒しにする」という比喩は、思いのたけをさらけ出すことを意味していよう。

  迷児の迷児のほんとのおれの心よこっこにゐたかと駆寄りてまし

                     土岐善麿

  はても見えぬ真直の街をあゆむごときこころを今日は持ちえたるかな

                     石川啄木

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うつせみ