天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

心を詠む(12/20)

  水清らによき渓選び梅をうゑしよき人の心かをらむ千春に

                    佐佐木信綱

  秋の心水に動きて小さき魚がすいすいとゆく眞ひるの釣堀

                    佐佐木信綱

  如何なるこころ現はす黒と黄と二色にわれは塗りかさねゐる

                     遠山光

*初句は四音なのでつまづく。「塗りかさねゐる」とは、すでに塗られている色の上に黒か黄色を塗っているのだろうか? 二色それぞれに込める自分の心が分らない、という。難解!

 

  いやはてのいちかばちかといふやうなこんなところへ心が来て居る

                     中原綾子

*いやはて: 最後、最終。 何かで切羽詰まった時の心情を詠んだもの。

 

  心危脆くなりてわがゆく風のなか暮れなづむ日に燃ゆる水見ゆ

                    犬飼志げの

  死ぬときの念いすずしくあらしめよ一切(いっさい)放下(ほうげ)自浄のこころ

                     坪野哲久

*一切放下: 禅宗では「放下」だけで一切の執着を捨て去ることを意味する。

 

  ごま塩の髪かぞえつつごんべえにすでに心は盗まれている

                    吉沢あけみ

*解釈が難しい。「ごま塩の髪」を数えるとは? 「ごんべえ」とは犬の名前か? ごんべえにすでに心を奪われている、という。

 

  吾亦紅われの紅とやひたぶるに心述ぶるはくるしきこころ

                     雨宮雅子

*吾亦紅を「吾もまた紅なり」と解釈して、「われの紅」というが、ひたすらに心のうちを述べることは苦しい、と詠んだ。

 

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吾亦紅