雲のうた(22)
今回から三回は秋の雲について。絹雲、綿雲、鰯雲、鱗雲、鯖雲 などがある。次の佐佐木信綱の歌は、あまりにも有名で教科書にも載っている。「の」連続がゆったりとして大和の国にふさわしい。
ゆく秋の大和の国の薬師寺の塔の上なる一ひらの雲
佐佐木信綱
夜に見れば不二の裾廻(すそ)に曳く雲の白木綿(しらゆふ)雲
は海に及べり 北原白秋
もみぢ斑(ふ)の山の真洞(まほら)に雲おり来雲はをとめの
領布(ひれ)濡らし来も 斎藤茂吉
天遠くわく綿雲にあたらしき今日の光はおもむろに満つ
松村英一
うろこ雲の行きとどまらぬ日のゆふべ芥子の実ゆるる庭に
おりたつ 佐藤佐太郎
鰯雲は空のさざなみその下に群れゐる草も木も人も 魚
浜口忍翁
鰯雲北にかがやきこころいたし結核家系われにて終る
滝沢 亘