心を詠む(14/20)
せめて同じき調べに心つながむとわれら危ふく木の扉押す
小野茂樹
忽然と心の中にあらはれしあをき扉のかげに佇む
小野茂樹
*二首に、扉が共通している。どうやら心のつながりを左右しているものを扉で比喩しているようだ。
冬山に来りてこころ緊るとも砕けつるわが白磁かへらず
畑 和子
*「わが白磁」とは、直接的には陶器のことと思えるが、大切な思い出の比喩ともとれる。
夕映のひろごりに似て色づきし欅は立つを 夜の心にも
高安国世
*高安国世(1913年 - 1984年)は、リルケを専門とするドイツ文学者。アララギに入会、土屋文明に師事して、短歌結社「塔」を創設した。
落葉色の野うさぎが跳ね林の中かるくしなやかな心が残る
高安国世
ストーブに火を入るる間を心ゆるぶ外の面ゆたかに雨の音して
高安国世
かすかなる心の翳(かげり)も読み合いて過ぎゆく一日一日の落葉
高安国世
*高安国世作品からは、羨ましいくらい平穏な生活の心が読み取れる。
人の心と言ふはおほよそ風にしてひと日ひと日を重ねゆくのみ
高貝次郎