天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

乗りもののうたー汽車、電車(4/5)

  ふたたびは死なざるものを汽車発てば湖(うみ)現るる日ざかりの駅

                       清水正

*生物の命は一回だけのもの。ふたたび死ぬことはあり得ない。汽車に乗っていて外の風景を見ながら思ったのだろう。

 

  屋上より発車の電車風の日の夕日のなかにゆらぎつつ出づ

                       中野菊夫

  急カーブ曲る電車がせめぎ合ふやうに見えつつ連なりてゆく

                       青田伸夫

  はつあきのゆふぐれに見き新幹線すきとほる管となりて過ぐるを

                       小池 光

  にんまりと昼を点して入りきたる<ひかり>の鼻は雨に濡れける

                       永田和宏

*擬人法。

 

  広軌から狭軌にかわる興奮が山形新幹線「つばさ」にはある

                       高瀬一誌

*東京駅―福島駅間は東北新幹線として山形新幹線開業前より先行して新幹線電車が運転していたため、狭義には在来線区間となる奥羽本線区間である福島駅 - 山形駅新庄駅間を山形新幹線とする。歌はこうした背景を踏まえている。

 

  降る雪に瞬かぬ目を光らせて白蛇(ヒドラ)のごとし新幹線は

                      春日真木子

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新幹線