天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

戦争を詠むー兵(2/5)

  もののふの矢(や)並(なみ)つくろふ籠手(こて)の上に霰たばしる那須の篠(しの)原

                     金槐集・源 実朝

*籠手: 戦闘時に上腕部から手の甲までを守るための防具。この歌は、栃木県那須野における狩猟の時の情景。

 

  もののふの取りつたへたる梓弓引いては人のかへすものかは

                    平家物語・梶原景高

  もののふの草むす屍(かばね)としふりて秋風さむしきちかうの原

                         河津美樹

  軍兵(ぐんぴやう)は物言はずして大将の下知きく時ぞいくさには勝つ

                    甲陽軍鑑武田信玄

*下知(げち): 命令。いいつけ。

 

  汽車のなかに妻子や親と睦みゐる応召兵と乗り合せたり

                       久保田不二子

  予備兵にわれはありけりねもごろに現役兵のものいふきけば

                         半田良平

*予備兵: 現役を終わった軍人で平常は市民生活を送り、非常時に召集されて軍務に服する。

 

  人間の流すべき汗をながしつくし予備兵われはかなしかりけり

                         半田良平

 

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籠手